本殿に祭られているのが熊野牟須美大神(くまのむすびのおおかみ)、この神を日本神話では伊弉冉尊(いざなみのみこと)と称している。牟須美(むすび)とは生成・育成を意味する古代語で「生す(むす)+秘(ぴ)」の二語が合成された言葉です。つまり、熊野牟須美大神とは、熊野に鎮座し「誕生や死」といった、この世に存在するあらゆる生命の根源を司っている神という意味で、熊野那智大社の主祭神です。
上之社(かみのやしろ)には速玉之男大神(はやたまのをのおおかみ)と熊野家津御子大神(くまのけつみこのおおかみ)が祭られており、日本神話では速玉之男大神を伊弉諾尊(いざなぎのみこと)、熊野家津御子大神を素盞嗚尊(すさのをのみこと)と称している。熊野速玉大社の主祭神は熊野牟須美大神と速玉之男大神、熊野本宮大社の主祭神は熊野家津御子大神、家津とは食物という意味です。
本殿脇の若宮社には皇祖天照大神(あまてらすおおみかみ)が、中之社には天忍穂耳尊(あめのおしほみみのみこと)・瓊々杵尊(ににぎのみこと)・彦穂々出見尊(ひこほほでみのみこと)・鵜茅草葺不合尊(うかやふきあえずのみこと)が祭られており、この神々は天照大神から神武天皇に至る4代の神々です。この内、瓊々杵尊は「天孫降臨神話」の天孫に当たる神、彦穂々出見尊は「海幸彦・山幸彦神話」の山幸彦に当たる神です。
また、下之社には穀物と養蚕の神「稚産霊命(わくむすびのみこと)」、火の神「軻遇突智命(かぐつちのみこと)」、土の神「埴山姫命(はにやまひめのみこと)」、水の「彌都波能売命(みづはめのみこと)」が祭られている。この四柱の神は熊野牟須美大神から化成(分身)した神々で、自然の恵みを象徴する神々です。
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